「バフェットの銘柄選択術」

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1、はじめに
・バフェットはインターネット関連などの人気銘柄には一切
関心を払わない。
・バフェットによれば、大半の投資家は短期指向で、好材料
で買い、悪材料で売る。
・株式市場の短期指向によって、時として価値の高い優良企
業の株価が大幅に割安に評価されることがある。
・悪材料で買うのがバフェットの基本スタンスである。
・バフェットの偉大さは、ほかの投資家が全く無視している
優良企業の長期的な投資価値を見出す能力にある。

第1章 市場からの永遠の贈り物---短期指向と悪材料現象---
・プロの投信マネジャーもインターネット・デイトレーダーも、目先の
値上がり益狙いの投資ゲームに終始している。それは株式
市場の性である。
・「悪材料現象」は株式市場の不変的な特性のひとつである。
・「消費者独占力」の強い企業は悪材料で売り込まれても、
そこから立ち直れるだけの強いエンジンを持っている。
・消費者独占力の強い企業こそがバフェットの富の源泉である。

第2章 バフェットが重視する優良企業とは
・バフェットは企業を2つのタイプに分けて考える。ひとつは
ヘルシーな消費者独占型企業、もうひとつはシックなコモディティ
型の企業である。
・消費者独占型企業とは、強いブランド価値を持っているか、
市場であたかも独占企業のような強いポジションを有している。
・コモディティ型の企業とは大多数の企業と同じような、差別化
されていない、付加価値の小さな製品やサービスを提供する
記号である。

第3章 コモディティ型企業は避けよう
コモディティ型の企業には次のような特性がある。
・売上高利益率が低く、在庫回転率も低い
・株主資本利益率(ROE)が低い
・ブランド価値がない
・多数の競争相手がいる
・業界全体に相当な過剰生産能力がある
・利益が不安定だ
・利益の設備稼働率に対する依存度が大きい
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第4章 消費者独占型企業とは---バフェットの富の源

したがって銘柄選択の鍵は、まだ誰も気づいていない、
規正のない水道事業を営む企業を見つけるか、消費者
独占力のある企業の株価を市場が悪材料に過剰反応
して不当に売りたたいた時に投資するかの、いずれかと
いうことになる。

・消費者独占型事業は有料ブリッジみたいなものだ。それを
欲しいと思えば、その会社から買わざるをえないような状況
にある事業なのだ。
・バフェットが消費者独占を判定する際に用いるテストは、
仮に採算を度外視したとして、それと同等の競争力の
ある企業を作れるかどうかというものである。
・消費者独占型企業はその製品の品質、ユニークさが購買の
最大の決め手になるような製品を提供している。
・素晴らしい事業を営んでいる消費者独占型企業も、景気の
影響を受けて業績は変動し、時に経営危機に陥ることがある。
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第5章 消費者独占型企業を見分ける8つの基準

基準1 消費者独占力を持つと思われる製品・サービスがあるか
基準2 1株当たり利益(EPS)が力強い増加基調にあるか
基準3 多額の負債を抱えていないか
基準4 株主資本利益率(ROE)は十分高いか
基準5 現状を維持するために、内部留保利益の大きな割合を
     再投資する必要があるか
基準6 内部留保利益を新規事業や自社株買戻しに自由に使えるか
基準7 インフレを価格に転嫁できるか
基準8 内部留保利益の再投資による利益が、株価上昇に
     つながっているか

・消費者独占型企業には通常、強いブランド力がある。
・バフェットは高い収益性と持続的な利益の増加をもたらす
消費者独占型企業を探す。
・消費者独占型事業を持つ高収益企業は、保守的な財務政策
をとるところが多い。これらの企業の多くは事実上無借金経営で、
何か問題が生じても自力で解決できる余裕を持っているだけでなく、
有望な新規事業への投資も期待できる。
・企業が株主に長期的に報いるためには、高い株主資本利益率(ROE)
をあげつづけなければならない。
・消費者独占型企業のもうひとつの重要な基準は、内部留保を
現在の事業を維持するために再投資する必要が小さいことだ。
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第6章 消費者独占型企業の4つのタイプ

1. 長期使用や保存が難しく、強いブランド力を持ち、販売
業者が扱わざるをえいないような製品を作る事業
#コカコーラとか

2. 他の企業が事業を続けていくために、持続的に使用せざ
るをえないコミュニケーション関連事業
#広告関連

3. 企業や個人が日常的に使用し続けざるをえいないサービス
を提供する事業
#クレジットカードとか

4. 宝石・装飾品や家具などの分野で、事実上地域独占力
を持っている小売事業


バフェットは消費者独占型事業には4つのタイプがあることを
発見した
・保存がきかず、強いブランド力を持ち、流通業者が取り扱わざる
をえないような製品を創っている事業
・メーカーが消費者にアピールするために、継続して使用しなければ
ならないようなサービスを提供するコミュニケーション事業
・企業や消費者が日常的に繰り返し必要とする、継続的な
サービスを提供する企業
・宝石・装飾品や家具のような商品の分野で、事実上地域独占的
な地位を築いている流通業者


第7章 絶好の買場が訪れる4つのケース

悪材料現象には次の4つのタイプがある。
・相場全体の調整や暴落
・全般的な景気後退
・個別企業の特殊要因
・企業の構造変化
相場全体が大きく下げるなかで、景気悪化や個別企業の
特殊事情にともなう悪材料が出た時こそ、絶好の買場になる。



「応用編」

バフェットの方程式


第8章 なぜ安値で買うことが大切なのか

1989年の株価11.80ドル
1999年の株価100ドル
(100/11.8)^(1/10)-1 = 0.238
23.8%が年平均収益率(複利ベース)

・投資対象を見つけるのに必要な情報はすべてインターネット
で入手できる。しかも、そのほとんどは無料だ。
・なかでも「人気集中銘柄、人気離散銘柄」リストは、投資対象を
物色するうえで役に立つ。
・全米の公開企業の財務データはSECのEDGARシステムを
通じて公開されている。情報を入手するには、インターネット上の
ホームページ(www.freeedgar.com)にアクセスすればよい。

興味のある企業が見つかり、直近の貸借対照表や損益計算書、
過去10年間の1株当たり利益(EPS)や株主資本利益率(ROE)
など、必要な情報を集め終わったら、バフェット流の計算に取り
かかることにしよう。
計算の目的は、次の2つの点を明らかにすることである。
第1は、その企業が消費者独占型なのかどうかである。
第2は、その株価が投資すべき妥当な水準にあるかどうかである。


第9章 利益は安定して成長しているか

・過去10年間のEPSを見るだけでも、その企業について多くの
ことを知ることができる。
・過去10年以上にわたって安定した利益成長を続けている企業
こそ、バフェットが求める企業だ。
・利益が毎年大きく変動するような企業は、投資対象にはならない。
・過去に安定した利益成長を続けていて、直近、利益が落ち込んで
いるような企業は、バフェットにとって有力な投資対象候補である。


第10章 買値こそ投資収益率の鍵を握る

・企業の利益に対するバフェットの見方は、ウォール街のプロとは違う。
保有する株数に応じて、その利益を自分自身の利益と見なすのだ。
たとえば、100株を保有している企業が5ドルの1株当たり利益(EPS)
をあげれば、500ドルの利益を得たと考えるのである。
・株価が25ドルで、EPS5ドルの株式を購入する場合、投資額に対する
直利は20%である。
・株式投資の収益率は、購入時の株価水準で決まってくる。


第11章 利益成長率から見た企業の実力

・株主価値がどれだけ増えるかは、その企業の経営陣がEPS
をどれだけ成長させられるかにかかっている。
・EPSを成長させるには、毎年、利益の一部を内部留保し、
高収益につながる再投資を続けなければならない。
・EPSの成長は、やがて株価に反映され、株主価値の増大が
実現される。
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第12章 国債利回り以下では投資と呼べない

では、株式投資の収益率と国債利回りを比較するにはどうしたらよいのか。
その株式の1株当たり利益(EPS)を国債の利回りで割ってやればよい。

1979年に、バフェットがキャピタル・シティーズ株に投資した時、同社の
EPSは0.47ドルで、当時の国債利回りは10%だった。
この数字をもとに、同社株の国債に対する相対価値を計算すると、
4.70ドルになる。
これはどいういうことかといえば、1979年にキャピタル・シティーズ株を
4.70ドルで購入していれば、投資額に対して国債利回りと同じ10%の直利
が得られたという事である。

・株式であれ債券であれ、どの投資が有利化比較することが必要だ。
・最も安全な投資は国債への投資である。
・国債の利回りを上回ることができないようなら、投資とはいえない。
・国債に対する相対価値で評価することが、「企業のオーナーとしての
視点」で投資を考える第一歩だ。


第13章 バフェットが高ROE企業を好む理由

たとえば、住宅の購入費が20万ドルだったとして、15万ドルを
銀行ローンで、残りの5万ドルは預金の取り崩しなどでまかなった
としよう。この場合、自己資金は5万ドルである。
一方、購入した住宅の家賃から、ローンに対する利払いと、
税金などの費用を差し引いた残りが利益である。かりに家賃に
よる収入が年1万5,000ドルで、維持・管理費や金利、税金などの
出費が年1万ドルあるとすると、利益は5,000ドルになる。
したがって、5万ドルの自己資金に対して年5,000ドルの利益が
得られることになり、この場合のROEは10%となる。

A社
資産 1,000万ドル
負債 400万
株主資本 600万
税引利益 198万
株主資本利益率(ROE) 33%

B社
資産 1,000万ドル
負債 400万
株主資本 600万
税引利益 48万
株主資本利益率(ROE) 8%

ROEが毎年同じ割合で続いたとして11年後は、

A社
株主資本 103,912,470
ROE 33
税引き利益 34,291,115

B社
株主資本 12,950,000
ROE 8
税引き利益 1,036,000

バフェットにとって投資とは、消費者独占型の企業を選び、
あとは長期的な複利の効果に任せるものなのである。

・株式を一種の「擬似債券」ととらえるバフェットは、
EPSを債券の利子と考える。
・企業利益は毎年変動するので、バフェットの「擬似債券」は
変動利付債と見なすべきだ。
・バフェットにとって重要なことは、中長期的な株主資本の成長と、
それに伴う利益の成長である。
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第14章 期待収益率の水準で投資を判断する

・割引率より利益の予想成長率を大きくすると、
割引現在価値は計算できない。
・50年以上の長期にわたって、企業の利益を予想
することは不可能だ。
・企業の利益をある程度予想ができるのは10年程度
までである。
・投資収益率は、高値で買えば低く、安値で買えば高くなる。


第15章 コカ・コーラ株の期待収益率と実績

・ある種の企業については、将来の利息をかなりの精度で
予想できる。そして、その予想利益にもとづいて、将来の
株価の見通しをかなりに正確に立てることができる。
・予想利益をもとに株カ予想をする場合は、過去10年の
平均PERを用いるべきだ。
・コカ・コーラの消費者独占力は、将来直面するであろう
様々な困難を克服するに十分な強さを持っている。


第16章 擬似債券として見た時の株式

・バフェットか買う株式は、将来にいくほどクーポンが大きく
なる擬似債券である。
・初期投資の部分に対する直利は購入時の株価しだいだが、
内部留保によって付け加える部分に対する直利はROEの
水準次第である。
・初期投資の部分に対する直利が低くても、時間の経過と
ともに総投資に対する直利はROEに近づいていく。
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第17章 利益成長率から期待収益率を求める

・消費者独占型企業の場合、過去のEPS成長率を
もとに将来の株価を予想することが可能である。
・株式の投資価値を計算し、それをもとに投資判断
するのは、バフェット流ではない。
・バフェットは株式を購入する前に、現実的に期待できる
今後10年間の収益率がどの程度になるかを考える。
・その投資から得られる期待収益率を計算し、他の投資
に対する期待収益率と比較して投資判断を行う。
・いったん投資を行った後は、日々の株価の動きには
頓着しない。


第18章 自社株買戻しが株主の富を増やす仕組み

・自社株買戻しは、企業のEPSを増加させ、自社株
買い戻しに応じなかった株主の持ち株比率を上昇させる。
・自社株買戻しは、パイの大きさはそのままで、切り分け
る人数を減らすことに等しい。
・自社株買戻しは、株価が非常に高い水準の時に行われても、
株主にとってはメリットがある。


第19章 本業による利益成長か財務操作か

・自社株買戻しによって、税引き利益が成長していなくても、
EPSを成長させることが可能である。
・自社株買戻しは、税引き利益の成長を上回るEPSの成長を
可能にする。
・自社株買戻しは、業績悪化をごまかすための手段として
利用されることがある。
・自社株買戻しによって、投資家は追加投資をしなくても
持ち株比率を高めることができる。

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第20章 経営陣の投資能力評価

・コモディティ型の企業よりも消費者独占型の企業のほうが、
内部留保を再投資した時の効果が大きい。
・内部留保を長期にわたって有効活用できる企業ほど、株主
に大きな利益をもたらす。
・コモディティ型の企業が内部留保を再投資しても、大した利益
成長は望めず、株価上昇も大きくは期待できない。
・消費者独占型の企業は内部留保を再投資して、大きな利益
成長を実現することが可能であり、株価上昇にも大きな期待が
持てる。


・第21章 インターネット時代のアービトラージ戦略

・バフェット・パートナーシップが、市場が下落した年にも
利益をあげることができたのは、アービトラージ戦略による
ものだ。
・バフェットがアービトラージ戦略のポジションをとるのは、
発表済みの取引だけである。
・オンライン取引業者の手数料引き下げのおかげで、今日では
個人投資家でもアービトラージ戦略から利益をあげられるように
なった。
・M&Aの最新情報が掲載されているmergerstat.comは、
アービトラージ戦略にとっての重要な情報源である。

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第22章 バフェット流投資のためのワークシート

「パート1」企業分析
Q1,その企業は消費者独占力を持っているか
Q2,その企業の事業内容を理解しているか
Q3,その企業の製品・サービスは20年後も陳腐化していないか
Q4,その企業はコングロマリットか
Q5,その企業の1株当たり利益(EPS)は安定成長しているか
Q6,その企業は安定的に高い株主資本利益率(ROE)をあげているか
Q7,その企業は強固な財務基盤を有しているか
Q8,その企業は自社株買戻しに積極的か
Q9,その企業の製品・サービス価格の上昇はインフレ率を上回っているか

「パート2」株価分析
Q10,その企業の株価は、相場全体の下落や景気後退、一時的な
経営問題などのために下落しているか
Q11,株式の益利回りと利益の予想成長率を計算し、国債利回りと
比較せよ
Q12,株式を擬似債券と考え、期待収益率を計算せよ
Q13,過去のEPS成長率をもとに計算する手法で、期待収益率を計算せよ

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